一年中お祭り騒ぎのマカオで、最もお気に入りの祭りが終わった。
バブルとは無縁の世代なもんで、F1ブームは中高校生の頃だったし、
セナが亡くなったニュースもあまり良く覚えていないけれど、
なぜかこの祭りのために、今年も海を渡ってしまった。
勘違いしないで欲しい。
私がレースの取材をしたって、1円にもならない。
それどころか、マカオを訪れる観光客の興味はカジノと観光と買い物と女だから、
イベントの無い時期に訪れた方が、安く滞在できるし何倍も旅行者向けの取材ができる。
第一、レースの事は未だに良く知らないから取材と言っても専門的な事は人任せで、
私はにわかファンのミーハー丸出しで、日本人なら誰でも応援するし、
セクシーなパドックガールに夢中で100m先にいたらしい日本人アイドルを取材し忘れたりしている。
多分私は、レースそのものではなく、マカオグランプリのファンなのだろう。
マカオの街並みや道路にとってこの日はハレの日で、
街の規模と交通量からは不釣り合いな立体交差や意味不明な曲がり路が、真の実力を発揮する日だ。
サーキットを内包するシステマチックで爆笑物の、日本ではあり得ない都市計画がたまらない。
グランプリの期間外にマカオを訪れた人には絶対に分からない、マカオの本当の姿を観に私は渡航しているのだ。
それにね、レースにはドラマがあるんだ。
今更言うなって怒られそうだけど、レースはドライバーの物だけではなくてパドックのメカニックやレースそのものを支える裏方スタッフ達みんなの物なんだって事が分かってきて、それがまたグッと来るんだよね。
例えばツーリングカーのレースはマカオで一度に2戦行うんだけど、1本目でマシンを壊したら2本目が始まるまでに修理しなくちゃならない。この時はパドックが戦場になる。
満身創痍のマシンはテーピングだらけで痛々しいけれど、『俺はまだ走れるよ』って声が聞こえるようで、感情移入せずにいられない。
F3の表彰台では優勝者の国歌が間違われるトラブルが発生した。
酷い話しだ。
私も含め会場全体でブーイングしたけど、待っていても正しい曲が用意ができず進行が止まってしまった。
このままでは表彰もできない、その時、どこからか歌声が聞こえてきた。
ポルトガル国歌を誰かがアカペラで唱い始めたのだ。
その声は徐々に大きくなり、最後には大合唱が会場を包んだ。
こっちも潤っとしちゃったもん。
マカオはポルトガルの植民地だったから、国民の多くはポルトガル国歌を知っている。
チャンピオンに贈られた歌声にも無数のドラマと思いが詰まっているんだ。
チームの仲間達に降り注ぐシャンパンが綺麗だった。
その夜、
私は一人『亞利』でワインを飲んだ。
街路樹が大きくなりすぎて最近はマカオタワーの全容が見えないけれど、
タワーの足下では賑やかなフードフェスティバルが開催され、こちらまで音楽が聞こえている。
ホントは取材に行くつもりだったのだけれど、気分じゃなかったんだよね。
こっちへ来て正解。
来年はメモリアルレースになる予定なので、オフ会企画します!
皆さんも今から予定をあけておいてくださいね。
一緒に爆音を聞きましょう!