ホテルロイヤル前には『バスコ・ダ・ガマ』という公園がある。
世界史で教わったあのバスコ・ダ・ガマだ。
ヨーロッパからアフリカ南端を経由しインドへの航路を発見した事で知られる彼は何を隠そうポルトガルの偉人で、マカオから送られた銀や陶磁器もまたその航路で運ばれ莫大な富をポルトガルにもたらした。
そんな訳で(マカオへは来ていないんだけど)マカオにはバスコ・ダ・ガマの胸像を飾るバスコ・ダ・ガマ公園があるのだ。
彼の胸像は公園中央の噴水池と一体になったモニュメントで、かなり背の高い塔の上にある像がどんなものなのかを近くで確認する事はできないが、ある時その像を見上げていて妙な違和感を覚えた。
11月中頃深夜の話。
あの晩,投石広場脇のタイ料理屋でイイ感じにできあがった私は、満月の月明かりでベンチのカップルがイチャつくガマ公園を歩いていた。
ロイヤルは高台にあるため自然と目線が上を向く。
上空は風が強いのかやけに雲の流れが早く、真上で輝く月を雲が度々隠して駆け抜けていった。。。。
「ん?」
「真上で輝く月?」
月は真上に出ないよね??
皆さんの知っている月はどこに出ているだろう?
私のイメージする月の位置は斜め上45度くらいから高くても70度くらい。
だったら、あれはなんだ?もしかして、UFO!?・・・・やっぱり『月』だ!!
なんと!マカオの月は真上を通るのだ!!
緯度の差から日本とは異なる場所に見える事は理解できる。
マカオのみならず、フィリピンやベトナムでも、真上を通る時期があるのだろう。
理屈は分かる。
がっ、酔っぱらいにはこの事実が受け入れられない。
皆さんもためしに、まっすぐ立って真上を見上げてほしい。
体操以外で真上を見るという経験は大人になるとそうあるモンじゃないから、これだけでもちょっと変わった気分になる。
そして、目線の先に月がある事を想像してもらいたい。
少しは私の感じた違和感を共有できるはずだ。
(ここからはあくまで酔っぱらいの行動ということで。。)
40年間見てきた月はそこにあったためしがなく、天頂にある月を見上げているとまるで世紀の大発見をしたかのような気分になってきた。
『これはマカオナビのユーザーに伝えなければならない!』
タイミング良く部屋にはマカオGP用に持ち込んだ一眼レフと望遠レンズがある!
私は一目散に部屋に戻ると機材を持って再び公園へ出た。
(三脚がなかったので)寝転んでカメラを顔に乗せた私の姿はさぞ奇妙に見えたことだろう。
公園のカップルが、私の方を指さして何やら話しているがそんなこと気にしていられない。
何せ世紀の大発見なのだ!
雲が入って影になってるけど、手持ちの割にイイ満月じゃないか?
。。。。いかーん!
これじゃぁ真上にあることが分からない。
低い位置なら建物や山などの上に月を撮せばいいのだが、なにせ奴は真上にいる。
超広角の魚眼レンズでもあればともかくそんな物は持って来ていないし、うーん。
その時、私の目前には大発見の大先輩バスコ・ダ・ガマ像がそびえていた。
感動だ!(絶対伝わらないと思うけど)
なんとかこの像を写し込んだ画を撮ろうと苦戦した結果がこれである。
気が付けばカップルの姿はベンチになく、私のカメラには40枚近い月の写真が残されていた。
そしてこの文章。
なんだこりゃ?
まあ、そんなマカオの夜だったのである。