天星碼頭さんから薦められて購入した『赤いペガサス』を読み終わった。
35年も前(1977年から1979年に連載)の話なのでネタバレも何もないと思うので、ざっとあらすじを書くと、
主人公ケンが新規参入した日系自動車メーカーのマシンでF1に参戦し、ワールドチャンピオンになるまでの軌跡を描いた物語。金も栄光もいらない主人公が必死に誰よりも早く走ることだけを求める中で、死と愛に向き合い限界ギリギリの勝負を続ける姿が感動的だった。
チームもレーサーも実名で沢山出るので、これを読むだけで当時の様子がよくわかる。マシントラブル(特にエンジン)の多さも時代を感じさせる。
そして、極めつけは死亡事故が当然の事として描かれている点が衝撃的だ。
1シーズンでいったい何人ドライバーが死ぬんだ!
このあたりの描き方は先般紹介した映画「ラッシュ」も同様で、表現に差はあるもののあの当時は本当に死亡事故が当たり前であり、そのリスクが人々を熱狂させる一翼を担っていたという事実は、近年になってレースを観るようになった私にはツラい『現実』だった。
古代のグラディエーターも現代の総合格闘技も、山登りや大陸横断だってリスクが高ければ高い程人々の関心は高まり、成功者は尊敬を受ける。
それは分かっているけれど、当時のレースはあまりに事故が多く、ドライバーが死に過ぎじゃないか!?
熱狂する観客と、死の恐怖と向き合い、消えない傷を心に負う関係者たちの構図は今のレース業界にも少なからず残っているように思え、ちょっぴり関係者側でレースを体験させてもらっている身として、私自身の覚悟のなさ、お祭り騒ぎに浮かれていた様が情けなくなってきてしまった。
ツライなぁ。
実際のところ、現在のレースは安全対策に対して非常に慎重だし、ドライバーの死亡事故は当時に比べればものすごく少なくなっている。これは多くの犠牲と引き換えに得た教訓の賜物で、今後も守り高めていかなくてはならない。
それでいて、常人にはできないスピードとテクニック、熱いバトルで魅了してほしいと願うファンの想いも決して身勝手ではないと思う。
このへんは興行としての観せ方の問題だし、そもそもファンがいなくちゃレースにならないのだから、今年もリスボアコーナーではクラッシュが多発し、大いに盛り上がることだろう。(中断が多すぎるのは興ざめなので適度にしてほしいがそれはまた別の話)
なんだか話が纏まらないけれど、要するに結構ヘビーな漫画で読み応えがあったって話です。
天星碼頭さんありがとうございました。