番外編 マカオノスタルジック紀行 芹澤和美さん

マカオナビ=以下:マ)

はじめまして、このたびは『マカオノスタルジック紀行』発売おめでとうございます。

マカオの裏路地、生活観が大変よく伝わる。まさにノスタルジックな1冊でした。

女性で、マカオに頻繁に行かれる方は珍しいと思いますが、芹澤さんがマカオをはじめて訪れたのはいつごろですか?

芹澤和美=以下:芹)

まだ中国に返還される前、98年頃だったと記憶しています。友達といった香港旅行の「オマケ」でした。

マ)その頃と今とで、ずいぶん変わったんでしょうね?自称日本一のマカオオタクということですが?ハマルきっかけは何かあったんですか?

芹)当時はまだのどかなアジアの田舎でしたね。

初めてのマカオ訪問で、たまたま道を尋ねた現地の人と親しくなったんです。「安全なカジノってどこにあるの?」という、今考えても若気の至りとしか思えない恐ろしい質問をしたのですが、不憫に思ったのか(?)、わざわざ時間を割いて観光案内をしてくれました。

それから3年後に、仕事でマカオを訪れることになって、その方と再会。ブランクがあったのに、会いに来てくれたのがとても嬉しかったですね。

3度目の訪澳は、その1週間後です。『マカオノスタルジック紀行』のあとがきにも書いたのですが、無性にどこかに行きたくなって、マカオを旅先に選びました。

そのときに過ごしたマカオでの時間が、私を元気にしてくれたこと。それが、マカオを好きになる大きなきっかけとなったのかもしれません。

今では、その方の彼女や彼女のママが日本に遊びに来るなど、家族のように仲良くさせてもらっています。彼らの存在も大きいですね。

マ)芹澤さんにとってマカオはカジノの街ではなく、古い友人の住む町なんですね。

何か運命的なものを感じますね。その辺りが、この本の中にも端々に感じられますが、執筆に当たり、テーマにされたことなどありますか?

芹)どんどん開拓され、変わっていくマカオにも、一歩路地裏に入れば人々の暮らしがあり、息づいが聞こえます。

私にとっては、それはとてもいとおしく、大切なもの。そういったローカルの空気が、旅する人に伝わればと思っています。

マ)それ、読んでいて伝わりましたよ。

今回の企画は御自分でカメラマンの安藤アン誠起さんに声をかけて始められたそうですが、そうすると責任重大ですよね、苦労などはありましたか?

芹)そうですね。アンさんのフットワークの軽さや、ローカルな取材が好きだとうことは知っていたので、なんとなくマカオの話はしていたんです。

最初は見向きもしてくれなかったのですが、ある媒体で偶然にも我々コンビでマカオに行くことになりました。これもすごいご縁だと思いますが、案の定、マカオを知るや、アンさんもマカオの虜です。

『マカオノスタルジック紀行』では、写真家の赤沼博志さんにも写真を提供いただきましたが、世界各国を放浪した経験のある赤沼さんも、旅行で訪れたマカオをずいぶんと気に入ってくれたようです。

マ)チームのベクトルが合っていたんですね。

実際に取材が始まると、旅行者として来ていた時と違ってくると思いますが、新しい発見なども有りましたか?

芹)不思議と、取材をしていても、なんだか旅をしているような気分でしたね。旅の延長のような、そんな感じでした。

新しい発見は、毎回ありますね。同じモノでも見方によってずいぶん変わったり。マカオはあんなに小さいのに、何度訪れても飽きることがありません。

マ)マカオといえばカジノは外せないと思いますが、芹澤さんはカジノへのアプローチで(カジノ本体ではなく)間接的に旅遊学院やディーラー養成学校へ行って取材するという方法をとりましたね。

私は面白いアプローチをするな、ただの旅行本じゃないんだなと感じました。

感想めいたコメントもなくさらっとレポートしていますが、なぜ直接カジノを取材しなかったのでしょうか?カジノお嫌いですか?

芹)カジノは撮影が不可能という、現実的な問題がありますね。また、私自身はカジノよりも、「なぜそんなにディーラースクールが人気なのか」「旅遊学院で、どんなことを学んでいるのか」ということに、興味があったのです。

マ)なるほど、そうするとディーラーの経験不足や、低年齢化、所得格差など彼らの現状を通してマカオの抱える大変大きな問題が見えてきたでしょ?そのあたりはどんな風にお考えですか?

芹)ディーラーの経験不足は、養成学校の先生もおっしゃっていました。メディアでは、「ラスベガスを抜いた!」とずいぶん華々しく紹介されていますが、その裏にはさまざまな問題がある。新たな社会問題も生まれるでしょう。

「素朴なまま変わらないでいて欲しい」なんて言ったら、外国人のエゴになってしまいそうですけど、本音は複雑ですね。

機会があれば、ぜひそのあたりも取材したいと思っています。

マ)表紙に定番の観光地でなく福隆新街を選ばれたのは芹澤さんですか?どんな意図があるのでしょうか?

芹)カメラマンのアン氏から提案があって、二人で決めました。深紅の格子窓に頑丈な門、そこにはレトロな中国語の看板があって、とてもノスタルジック。

初めて訪れたときから、素敵な場所だなあと好きになっていた場所でもあります。

発展するマカオだけでなく、路地裏のノスタルジックなシーンを大切に伝えたいというキモチで選びました。

以下、カメラマンのアン氏より回答をもらいました。

当初は、お馴染みの世界遺産の教会やセナド広場といった、いかにもマカオな写真を使いたいという案もあったんです。

でも何となく、オリジナリティーに欠ける気がしたんですね。

それに芹澤さんと私が考えてるマカオの本は、もっと動的でライブ感のあるものだと。

そこで私が「この写真なんかどう?他にはない写真だし、なんだかノス タルジックな感じがしない??」

と芹澤さんに尋ねたところ、「これなら今回のタイトルにもぴったりじゃないかな。これにしようか?」と、

最終的に2人で相談して決めました。(本のタイトルは、表紙写真を決める前に決まっていたんです)

コンセプトとしては、「アジアのsomewhereで、どこか懐かしさを覚える光景」。

福隆新街を歩いている女子学生が、駄菓子屋にでも立ちよって、ちょっと菓子でもつまんじゃいそうな・・・そんな一枚です。

マ)私もあの辺、大好きです。学校帰りの子供たちや、路地の入り組んだ感じ良いですよね。

マカオナビのおススメコースにもなっているんですよ。

そういえば、本の中に『世界遺産・マカオ歴史地区めぐり』ビギナー編・リピーター編・ディープ編と3コース紹介されていましたね。

チョッと厳しい指摘かもしれませんが、『地理的にここの次にこれはないだろ!』『何でこれがディープ?』とツッコミどころ満載でした。

ここだけが違和感があったのですが、本当に芹澤さんが歩いて作成していますか?

芹)すべてを訪れてはいますが、他に寄り道をしながら、ですね。

ウォーキングマップというよりは、街歩きの参考にしてもらいたいので、旅をする方にも、寄り道をしながら、世界遺産めぐりを楽しんでもらえればと思います。「ディープ編」は、世界遺産を訪れるという目的だけでなく、視点を変えてみると、より面白いのではないかと思います。モンテの丘では、大昔の大砲が新しい大型ホテルを狙っているように見えたり、お線香の向こうにアズレージョがあったり。歴史があって、東洋文化が混ざるマカオならではの光景だと思います。

次の機会に、より便利な世界遺産マップも作りたいと思います。

マ)なるほど、確かに本をよく拝見すると、今のお話も納得いきます。ただ、帯の『徒歩でめぐる世界遺産3コース』という表現は誤解を受けそうですね。

意地悪な質問でしたね。(笑)

マ)さて、街歩きの話しが出ましたが、マカオは男性向きの観光地のように言われる事も多いのですが、マカオへ訪れる女性観光客の方に特にお勧めのスポットはありますか?

芹)私から観ると、マカオは女性にこそ行ってもらいたい街。一緒にいった女性が皆さん「心に残った」と言ってくれるのが、コロアン島です。夕暮れどきのコロアン島は、ぐっときちゃいます。

マ)ああ、良いですね。穏やかで、マカオ半島にはない時間がありますね。ウエスティンリゾートを常宿にする日本人VIPもいるんですよ。

 

芹)大人の女性の方には、コロアン島のホテルでのんびりする休日もおすすめです。

あとは、セナド広場を進んだ奥のほうにある、小さなお店がたくさん入ったショッピングビルでしょうか。

マ)えっ!?入ったことありません(汗)何があるんですか?

芹)ブランド品はないけれど、ローカルの女の子に混ざって洋服やアクセサリーを買うのって、けっこう楽しいものですよ。

ただし、エキサイトする可能性もあるので、女性同士のとき限定で(笑)。

マ)なるほど、これから女性がドンドンマカオへ行くようになってくると、香港のようにショッピング情報が充実してくるかもしれませんね。

芹澤さんにはその先駆者として、これからも情報発信していただきたいと思います。

マカオナビにも女性からの書き込みがあるのですが、今のような返事が中々できないのが現状なんです。是非遊びに来てくださいね。

マ)最後にこれを読んでいる皆さんにメッセージをお願いします。

芹)香港旅行のオマケではないマカオ。

カジノをしなくても大人が楽しめるマカオ。

魅力いっぱいの街、マカオを綴った一冊です。

この本がきっかけとなって、一人でも多くの人に、マカオの魅力が伝わり、マカオを知る人には、さらに旅の記憶を増やしてもらえたら、本当に嬉しく思います。

芹澤和美さんありがとうございました。

(2007-7作成 2007-8更新)

マカオ ノスタルジック紀行

『マカオ ノスタルジック紀行』(双葉社)

1,680円(税込)

文/芹澤和美

写真/安藤”アン”誠起

1章■ミックスカルチャー、マカオは摩訶不思議

――古今東西、さまざまなカルチャーが入り混じった摩訶不思議な街・マカオを歩こう

2章■グルメパラダイス・マカオへようこそ

――さまざまな国の食文化がミックスしたマカオは、知る人ぞ知るグルメパラダイス

3章■マカオのヒューマン&カルチャーに迫る

――ローカルの暮らしと、マカオのシンボル、リスボアの最新の姿をフィーチャー

4章■モダン・マカオで隠れ家バカンス

――極上ホテルに泊まってスパでリフレッシュ。マカオはアジアの隠れたリゾート

5章■ショートトリップ アナザーストーリーinマカオ

――マカオから足をのばして中国へ。マカオで知られざる歴史の旅へ。

おまけ■マカオ大辞典

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