- おとな旅. 週末マカオ 日本からいちばん近い欧羅巴- をテーマに万華鏡〈kaleidoscope〉のような町- あなただけのマカオを見つけてください。
マカオの元祖“北京餃子” – こだわりの味を支えたのはあの本田宗一郎の精神


マカオは中国の南部に位置する為、マカオの餃子はいわゆる飲茶に出てくる点心の餃子である蒸し料理の“蝦餃”(Har Gow /ハーガオ)か、或いはワンタンのようにラーメンなどのスープに入れて食べるタイプのモノで日本の様に焼いたり、揚げたりしたものは無い。

日本の餃子の元祖は中国の東北部と言われていて、その代表格はやはり“北京餃子”であろう。
但し日本の様に『ご飯のおかずに餃子』を食べるスタイルは無く、炭水化物である餃子の皮に包まれた餡(タンパク質の肉や野菜等)をまとめて食べる完全食のスタイルであり、それを茹でたり、焼いたりして食べるスタイルを“北京餃子”のスタイルであると、一旦定義する。
マカオで四十余年。
一貫して北京餃子のスタイルを頑なに貫いている店がある。
それがセナド広場から歩いて程なくの場所にある、北京出身の李津海さんの店“北京水餃”。
結婚を機にマカオに移り住んだ李さん。
周りを見渡してみると北京スタイルの餃子店が無い事に気がつき、自分で店を始める。
以来、高度成長を遂げたマカオにあってもいつまでもリーズナブルな価格のままで、その味はマカオ市民に愛され続けている。
コロナのロックダウン後、『餃子屋はいつから再開するんだ?!』と誰ともなくスレッドが立ち、『早く店を開けて欲しい』と願う市民と『開けてまた(政府が)閉めろ!になったらたまったもんじゃないでしょ?!ちゃんとしてからだよ!』と答える店側との応戦がマカオ市民のあいだで話題になった事があった。
裏返せば、そのくらいに市民に愛されているんだろう、と言う証だ。
餃子の味に対するこだわりは以前から聞いていて、「中国製の豚肉や調味料は使わない」と聞いて驚いた事があった。
「肉に独特な匂いがあるでしょ?あれじゃあダメだ。」
インタビューしている中で、何度か不思議な事を逆に質問された。
「中国はどうしてトヨタみたいな企業を作れなかったんだろうか?」
これは李さん自身の哲学のテーマだそうだ。
職人としてのこだわりの是として、中国語に翻訳された本田宗一郎氏の『職人魂』を読み、自身に投影させていると言う。
その精神の表れだろうか?
寒くなると「熱々に茹で上がったあの餃子」が食べたくなり、暑くてどうしようもなくなると、エアコンの効いた店内で、キンキンに冷えたビールで「あの餃子を食べたくなる」のである。
つまり街の人の胃袋を完全に掴んでいるのである。
これをソウルフードと言うのだろう。
北京餃子は確かにマカオの料理ではないが、マカオに欠かせない店であることは間違いのない事実だ。
来店者が日本人と分かると、日本語メニューを出し、ニコニコと笑顔で接する。
この店はマカオになくてはならない、大切なマカオの食のコンテンツである事は間違いない。
マカオの“地元メシ”にはガイドブックに載っていない、しかし夜中になると知った顔がどこからともなく集まる“麺屋”さんなど、掘り出しのB級グルメが山ほどある街。
この“北京水餃”も間違い無く、そんな店のひとつである。








オススメの食べ方として、まずはビールにつまみでキュウリのたたき割り(涼拌青瓜)。ニンニクとごま油の効いたパンチのある味は時として、餃子が来る前にふた皿目を頼んでしまうほど。
餃子は茹でから始める。
黒酢または赤酢(筆者は赤酢が好み)に、店特製の豆板醤を混ぜてベタッとつけて食す。
口の中で溢れ出す熱々の肉汁は、小籠包のそれにも通じる美味。
そして皮の甘みと醬の辛さが絶妙な味のハーモニーを生み出す。
焼きは片面、両面へと進める。
片面は茹でとは打って変わって、小麦の焦げる良い香りが鼻腔をくすぐる。それは茹でにはないテイスト – 香りが重なる瞬間。
そして両面焼きは両サイド焼かれて逃げ場を失った肉汁が、完全に濃厚なスープとして口の中に溢れ出すその醍醐味を味わうのが流儀。
最後は揚げ饅頭。表面はカリっ、サクッと揚げた饅頭。これに甘い練乳をディップして食べる。イヤでも満足いくし、どれだけ腹一杯でもこれを最後に食べないと終わらない(し、終われない)。
それでも財布に優しいその店の信念は、いつでもどんな時でも優しく、そして充分な満足を我々に与えてくれる。
願わくば、あとに継ぐ人もその味のみならず、精神も受け継いで欲しいと切に願う。
営業時間:11:00-22:50
(台風・洪水、店主の個人的な用事以外は営業)
住所:新馬路新填巷5號A
電話:+853-2832-4182
セナド広場から徒歩5分
