- おとな旅. 週末マカオ 日本からいちばん近い欧羅巴- をテーマに万華鏡〈kaleidoscope〉のような町- あなただけのマカオを見つけてください。
留学時代に食べた及第粥 マカオの食文化と心温まるエピソード 曾田彩乃 column Vol.2 マカオ – 夢と希望の交差点


マカオ料理・中華料理・ポルトガル料理・東南アジアの料理などなど……多種多様な美味しいお店がある。食いしん坊の私はマカオでの留学生活中、いくつもの美味しいお店で楽しんだ。
きっとマカオに行ったことがある人たちはそうだろう。
「もう一度、あのお店に行きたい!」
「またあの料理が食べたい!」
と願う人もいるだろう。
私もまた行きたいお店やメニューがいくつもある。
けれども
「あなたの好きなお店に連れて行ってあげます。ただし、一軒だけ選んでね」
と言われたらどうするか?
どのお店にしようか悩む人も多いはずだ。私がそう言われたら……行きたいお店は決まっている。
マカオ大学近くにあったお粥と麺のお店だ。
私が留学した頃はまだマカオ大学はタイパ島にあった。昼ご飯は学食で買うことが多かったが、夕食は大抵の場合が自炊か学外に足を運んだ。
中華粥といえば朝食のイメージだったが、ここは夕方から営業しているお店だった。最初は同じ日本語教師のインターン生に連れて行ってもらったが、気が付けば一人で何度も通った。
その理由はもちろん料理のおいしさ、リーズナブルさもあったが、一番は親切な店員さんがいたからだった。
その店員さんの名前は知らない。すらりとしたお姉さんで、いつも綺麗なセミロングの黒髪をポニーテールに結び、お店のエプロンをつけていたのを覚えている。
ここでは親しみをこめてお姉さんと呼ばせていただく。
お姉さんは、お店が空いている時は料理を待っている間に私の持っている指差し会話帳を一緒にみて発音を教えてくれるようになった。
私がスーパーへ買い物に行った帰りなどにお店の前を通ってガラス越しに目が合うと、友人のようにニコニコ笑って手を振ってくれた。
ある日の夜、まだ大学でインターンの仕事が残っていたので、オフィスでお粥を食べることにした。店内は地元の人たちでにぎわっており、私は隅のほうに腰かけ
「呢個、一個。打包。(これ、ひとつ。持ち帰りで)」
と、拙い広東語でお姉さんに頼んだ。
私がいつも頼むのは「及第粥」という豚肉や肉団子の入ったお粥。それに皮蛋を追加する。
この及第粥も最初にお店に来た時にこのお姉さんがおススメしてくれたものだ。皮蛋は留学前から好きだったので入れてもらっていた。
けれど、この日はお財布が少し寂しかったこともあり、ちょっと節約しようと皮蛋のトッピングを頼まなかった。
お姉さんはメニューの「加皮蛋」を指さして広東語で何か言う。うーん、分かんないけれど多分いつもの皮蛋はいらないのか聞いてくれているんやろなぁ……。
そうは思ったもののお姉さんに事情を伝えられるほど広東語も中国語もできなかったので
「今日はこれでいいです。OK」
と日本語で貫き通した。お姉さんは分かったのか、オーダーを店の奥に通してくれた。
しばらくして持ち帰り用のお粥を持ってきてくれたお姉さんに、及第粥のお代を支払ってマカオ大学のオフィスに帰る。
自分のデスクに座り、
「さあ、食べてもうひと頑張りしよう!」
そう思って持ち帰り容器を開け、プラスティックのレンゲでお粥をすくった。
まだアツアツのお粥、ジューシーなお肉、それにプリっとした皮蛋が入っていた。そう、頼んでいない皮蛋が追加されていたのだ。
これはお姉さんの優しさだったのだと思う。
それからも私はそのお店に何度も通い、いつも及第粥に皮蛋を加えたものを注文した。
帰国2日前に日本に帰ることを(中国語の話せるインターン生に通訳してもらって)お姉さんに言うと「またいつかマカオに帰ってきてね」と伝えてくれた。
お姉さんはお元気だろうか。
いつかマカオに帰ってお姉さんに会うことができたのなら、お礼と「全然マカオに帰らずごめんね」と伝えたい。
曾田彩乃
及第粥、写真引用:Gastronomy Map – 富記粥品
https://maps.gastronomy.gov.mo/author/memo/memo071